「今日は楽しかったね~」
「あ、あぁ!楽しかったな!」
今日、俺達四人は遊園地に遊びに行っていた。
俺が今この隣にいる人、秋(あき)にちょっとでも俺を気になってほしい、あわよくば告白出来たらと思って実行した。
残りの二人、葉瀬(ようせ)と玲人(れいと)は俺の作戦を知ってた上で来ていた。秋と二人きりで、なんて来れるわけがないため無理に誘ったのだ。
何かとあの二人は俺達を二人きりにさせようとしてきて本当に大変だった。でも嬉しかった。
最終的に秋と葉瀬は帰る方向が同じなのに、玲人の家に忘れ物したから取りに帰るとか言って俺に秋を押し付けていった。
そして結局、俺は告白出来ていない。
「バイキングの葉瀬の叫び声凄かったよね~」
「『降ろしてッ!降ろしてよぉぉッ!!!うわあああぁぁぁッッ!!!』...だったよね」
「そうそう!玲人さんも怖くて叫んでたはずなのに途中から心配してたよ!......葉瀬には悪いけど凄い面白かった...」
はははっ、と笑う横顔を眺める。
「でさー?.........拓也(たくや)?」
秋がそれに気づいてこちらを向く。
今だったら言えるかもしれない。
「あ、秋............す」
「す?」
「......す、...き、な人とか居んの?」
「......え?」
...ちょっと待って俺何やってんだよ!!!あと!!あとちょっとで!!アホかよ俺は!!!なんでそんなの付け足した!!!切れよ俺!!もぉぉぉぉ馬鹿ァァァァァァァァァァァッッ!!!
「好きな...人?なんで?」
「......い、や...俺彼女が出来たら、今日みたいな遊園地に連れていこうと思っててまぁ俺にはまだ彼女は居ないけどこれから出来る可能性はあるから考えてただけで、そういえば秋に聞いたことないなって思ったから聞いただけで皆に聞いてるから深い意味は全然ない」
(ああああぁぁぁバカァァァァァァァァァァァ)
「そうか......すきな人...」
秋は何か考えるように顎に手を当てる。
おかしい。前に聞いたときは『居ないから』だったのに。
「......その、一応...いる...?...かも」
「へぇ、そうなんだ」
...いつから。なんて聞けなかった。
知らなかった。秋にそんな人が居たなんて。
秋は凄い鈍感だからじわじわ攻めてくつもりだったのに。
頑張ろうと、思ったのに。
「...た、拓也は!?拓也は居るんでしょ!?」
「.........うん」
秋だよ、なんて言ったら困るよな。
「だよね」
「...俺、秋の事応援してるから。頑張って」
「え、あ、うん......ありがと。あ、ここら辺でいいよ。またね」
「うん、じゃあまた」
手を振って俺達は別々の道を歩く。
ゆったり、ゆったり、俺は帰り道を行く。
告白する前で良かったかもしれない。
(秋の事......応援しなきゃなぁ...)
胸がズキりと痛かった。逆に告白してしまえば良かったかもしれない。そっちの方が潔かったのかも。
俺はまだ、これを捨てるにはキツいらしい。
お題 「夢が醒める前に」
出演 拓也 秋 葉瀬 玲人
3/21/2024, 8:50:13 AM