びっぴ

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今日にさようなら。

私は明日引っ越しをする。
荷物はすでに新しい家に送った。
引っ越しの準備はできている。
あとは今日学校に行って、皆とお別れをして、帰って、車で出発するだけ。
転校の準備は…できている。

最後の学校。
緊張して鼓動が早い。
いつもどう皆と話していたっけ?
そんなことを考えながら登校した。

教室のドアを開けると、クラスの仲良しメンバーが私を囲った。
転校の話をすると思いきや、いつもと似たようなテレビの話で盛りあがった。
その雰囲気のおかげか、なぜだか肩の力が抜けた気がする。

それからいつもと同じような時間が流れ、何事もなくすべての授業が終わった。
その間私は泣くのを我慢するのに必至だった。

寂しい。お別れなんてしたくない。

時の流れとともに、私とクラスでの思い出が消えてしまうのではないかと思った。

放課後になっても私は椅子に座ったまま机に突っ伏していた。
そうしていると、またいつものメンバーが私を囲った。

「〇〇ちゃん。」

私の名前を呼ぶ声が聞こえる。
その声は震えていてか細かった。

やっぱり嫌だ。みんなと一緒にいたい。

私はそこで初めて声を出して泣いた。
我慢できなかった。
それを見た皆も大きな声で泣いた。

ーーー

どれくらい皆で泣いていたのだろう。
しばらくしてお互いの顔がグチャグチャになっているのを見ると、皆で笑った。
こうやって一緒に笑えるのも今日が最後。
そんなふうに考えてしまってまた泣きたくなった。

「皆で帰ろう。」

一人の子がそう言うと、皆頷き、帰りの支度をし始めた。

帰りたくない。今日が終っちゃう。

思い出を振り返るかのようにいつもの道を下校する。
気づくともう別れ道についていて、普段よりつくのがとても速く感じた。

まだ一緒にいたい。

多分この時誰もがそう思ったけれど、誰も口にはしなかった。

そうして視線を最後まで交わしながら私は皆に背を向けて歩き出した。

足が重い。
前がぼやけて見えない。
戻りたい。
明日が来てほしくない。
振り返りたい…。

「〇〇ちゃーん!また会おうねーー!!」
「新しい学校でも元気でいてねー!」

遠くから皆の声が聞こえた。
ハッとして思わず振り返ると、皆笑顔で手を振っている。

あぁ、今日が終わるのか。

さっきよりも空が暗くなっている。

けれどもう覚悟はできた。
私の中の思い出は消えない。
私の時は終わらない。
進まないと!

「じゃあねー!」

全力の笑顔で手を振って、私はまた皆んなに背を向けて走り出した。

皆に、今日にさようなら。







2/18/2024, 1:42:48 PM