狭い部屋
ぼやけた視界の中、毎日僕に話しかける声が聞こえる。
愛しそうで、どこか楽しそうな男の人と女の人の声。
僕はその声が大好きだ。
…でもそんな声が今日は少し寂しそうに聞こえた。
手を伸ばせばすぐ届くような狭い部屋の中。
(僕がいるよ!)
そんな思いを抱きながら僕は必死に足を伸ばした。
「あっ蹴った!!」
大好きな女の人の嬉しそうな声と
「また分からなかった…うう、次こそは触るぞ!」
大好きな男の人の残念そうな声に安心して
僕はまた狭い部屋の中を揺蕩うのだ。
6/4/2024, 10:13:00 AM