「私とあなたじゃ住む世界が違う 第八十話」
「ラピスが警察官になってから、ガーネットは犬みたいに毎日吠え続けてるんだよね…って、最初会った時は犬だったけど」
志那は、マンションの前でアイスティーを飲んでいると、セラフィが遠くの方でこっそりとこちらの様子を見ていました。
「ラピスの呪いも解除しちゃうなんて〜。ラピスだけは、呪いに掛かったままが良かったのにぃ。ナイトメア様が邪魔者のガーネットを極地に封印して、残りみーんなをセラちゃんの物にすれば、ラピスが手に入るってアドバイス下さったから、その通りにしたのよ!でも、コレじゃ全然上手く行ってないみたいじゃない……」
セラフィは、涙目になって悔しがっていました。
「……でも、ナイトメア様はこの状況も想定内って言ってたから、きっと、ラピスはセラちゃんの物になるわよね!かーえろ」
セラフィはどこかへと行ってしまいました。
「…?今、そこに誰か居たような……」
志那は、セラフィが居た所の方を見ました。
「志那さん、この前はどうもありがとうございます」
ラピスが、志那の前に現れました。
「ラピス!」
「おや?今、ガーネットは…」
「朝、マンションから出てどこかへ行くのを見たけど…」
「なら、大丈夫ですね!」
ラピスは、一呼吸置いて言いました。
「お願いします!シトリンも助けてやって下さい!」
ラピスは、お辞儀して志那にお願いしました。
「ええっ?!……良いけど、どこに居るの?」
「三次元国の拠点に居ます」
「三次元国にも拠点があるの?」
「三次元国だけでなく、世界各地に林檎の拠点がありますよ〜」
「世界各地にって、それだけ人気があるって事なんだね。林檎王子だから、当然って言えば当然か…」
志那は、林檎王子の財力に圧倒されていました。
「どうか、よろしく頼めないでしょうか……?」
「勿論、良いよ。……戦力的にフロンティアウォーカー達で行けるかな?」
「出来れば林檎の人達もお願いしますよー…あ、ガーネットは抜きで。後々足手まといになるので」
「じゃ、呼んで来るね」
志那は、フロンティアウォーカーと林檎王子のメンバーを呼びました。
「ラピスの頼みか…」
「俺達も協力するぜ」
「フロンティアウォーカーさん、林檎の皆さん、ご協力ありがとうございます!」
「君と言えど、元々は仲間だった者同士ですから」
「じゃあ、行きましょう」
一行は、三次元国の林檎王子の拠点に向かいました。
「ココですよ」
「スゲェな…まるで中世ヨーロッパの城やんか!」
林檎王子の拠点は、中世ヨーロッパの城の様に壮大で美しい建物です。庭は手入れされていて、迷路のようになっています。
「まさに、王子様の住処だね」
フロンティアウォーカー達は、林檎王子の財力に圧倒されていました。
「どこ行けば、中に入れるんや?」
スノーは、庭を散策し始めました。
「あ、侵入者除けのトラップがあるので、俺達が案内します」
「迷わないように気を付けて」
林檎王子達は、志那達を城まで案内しました。
「デカい扉やな…」
「開けますよ」
アメジストは、城の扉を開けました。中は、調度品や家具が荒らされている状態でした。
「ど、泥棒に入られたのですか?!」
「コレは酷いね……」
フロンティアウォーカー達は、空き巣の仕業かと疑いました。
「シトリンに何かあったら…」
ローズは、不安になりました。
「シトリン!」
アンバーは、城中の扉を開けて行きました。
「シトリンを探しましょう」
アメジストを始めとする志那達も、シトリンを探し始めました。
「何処だろう…?」
「居たぞ!大広間だ!」
アンバーは、皆に大広間に集まるように叫びました。
「ウワッ……」
大広間では、痣だらけのシトリンが佇んでいました。
「シトリン、痣だらけじゃないですか!」
シトリンは、警察官の制服姿のラピスを見るなり、
「ラピス、裏切るなよ……ガーネットが可哀想だろ」
と言って、襲いかかって来ました。
シトリンは、闇覚醒を発動させて、城全体に電気を纏わせました。
「い、痛い!」
「コレは、無闇には動けなさそうだな…」
志那とカインドを始めとする一行のほぼ全員は、電気のせいで動けなくなりました。
「僕なら戦えるかも…」
キトンは、電気を交わしてシトリンに近づきました。そして、闇覚醒でヒョウに変身しました。
「グルル……」
キトンは、シトリンに噛み付いて、左腕の肉を引き剥がしました。だけど、すぐに再生してしまいます。
「獰猛な獣だな、だけど、再生は可能だ」
シトリンは、キトンに帯電網を貼り付けました。
「ウグっ……痛い!取れない!」
「電気が張り付き、痛みが延々と続く技だ。相手は脱退者と弱小グループだからこの程度で十分だろう」
「章司君を呼んだ方が良いかな…?」
志那は、スマホで章司を呼びました。
「俺も応戦するぜ!」
ガバードは、闇覚醒で背中に大きな翼を生やしました。そして、羽ばたいて空中に浮きました。
「シトリン!コレでどうだ!喰らえ、凄惨なる針の雨!」
ガバードは、シトリンの所まで飛んで行き、大量の羽根の針の雨を降らしました。
「クソっ、建物の中じゃ無かったら地震で何とか出来たのによ……」
アンバーは、悔しがっていました。
羽根の針の雨の威力は、周りの物を破壊する程の威力だったけど、シトリンは、何とか持ちこたえて攻撃を再開しました。
「……万事休すか?」
「遂に、この時が来やがったみたいやな…」
スノーは闇覚醒を使いました。
「奴に電気抵抗を無くして動けなくすればエエんやからな。まずは、水と鉄が電気を通しやすい物質や」
スノーは、志那とロードの方を見ました。
「トーチャフィールド!」
志那は、闇覚醒でシトリンの動きを封じようとしました。
「ウーワっ、危ねえ刃物だな……」
シトリンの動きが少し鈍くなりました。
「コッチも使わせてもらうで。海流龍王!」
大広間に海が出現して、龍の形をした水流がシトリン目掛けて突撃しました。
「海水言うたら、塩水やな!タダの塩水ちゃうけどな」
シトリンの服に掛かった海水が、酸で服を溶かしていました。
「太古の海水は、物凄い酸の毒水みたいやな!」
「クッ、危ねえ技だな……」
「後は、氷漬けにして動けなくすると……」
スノーは、闇覚醒を使いました。
「超低温領域」
シトリンは、−200℃の冷気で氷漬けになってしまいました。シトリンが放った電気は、全て本人の所に戻って行きました。
「ヒギャ……!」
シトリンは、倒れてしまいました。スノーは、一般人の姿に戻りました。
「スノーさん……」
「パズルには、掟があってな……闇覚醒使うたら破門、つまり、契約解除や」
「志那ー!怪我人は何処ですか?!」
「章司君、皆介抱してあげて」
章司は、救護術を使って城に居る全員を介抱しました。
「ん……?」
「シトリン、目を覚ましましたね?」
シトリンが目を覚ますと、ラピスが目の前に居ました。ラピスは、シトリンに回帰光玉を抱かせました。
「僕達、林檎を終わりにしよう……」
眩い光を放った後、シトリンは一般人の姿に戻りました。
4/10/2023, 11:32:01 AM