『たまには』
本屋に行きたいと言われたので行ってこいと返すとついてこいと言われた。
「せっかくの休みに、なんで」
「休みだからでしょ」
理由になってない理由に反論するのは諦めている。
こいつがそうと決めたら変えられないのはとっくに知ってるからだ。
「でも、なんで本屋」
「んー、気分」
「今時ネットで買えるし普段もそうだろ」
実際その影響で本屋の経営が昔より苦境に立たされているのは知識としては知っているけれど、だからといって便利さには叶わないと思ってしまうのは薄情なんだろうか。
そんなことを思いながら着いたのは昔からある本屋で、前は何度か来ていたものだった。
「あったあった。懐かしー」
手にしてたのは見覚えのある絵本。
「それ買うのか?」
「ううん、ここで買ったなあって」
確かこいつのお気に入りの一冊だった記憶がある。
そこからなにか限定のものでも買うのかと思ったが、それこそネットでも買える普段読んでる小説を数冊買っただけだった。
「なんだったんだ今日」
店を出て帰る途中そう聞くと、ぽそっと口を開いた。
「あのお店、今月末で閉まるんだって」
ああ、そういうことか。
当たり前だが、あの店だって例外のはずがないんだ。
それなら先に言ってくれれば良かったのに。
まだ数日あるらしいから、それまでにひとりでまた行くかと考えてから、こいつも誘うかと考え直した。
3/5/2024, 11:59:03 AM