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tiny love




抱えきれないほどの愛なんて貰ったことがなくて、ただ欲求が大きくなっていくだけだった。

まず、愛すら貰ったことのないやつが、そんなに大きな欲望を求めている時点で、何かの間違いなんだ。

だから、今、寂しいと思っているのは普通のことであって、適切な罰。

落ち着いて、深呼吸をする。息が少し荒い気がするが、そんなことはどうでもいい。

俺は一体、何を求めればいいのだろう。

「悪夢でも見てんのか?」

「うわっ……さ、左之助……か」

「齋藤お前、冷や汗すげぇぞ」

頬に手を触れてみると、汗が流れているのがよく分かった。

何故俺はこんなにも焦っている?恐怖を感じている?それとも、……いや、一体なんだ。分からない。

「うーん。齋藤、なんか欲しいのか?」

「……え?」

左之助は自慢の馬鹿力で俺の額を弾く。その時、やっと視界が明るくなった。

では俺は、何が欲しいのだろうか。物理的なものではないのは確かだ。

そうか。俺、愛が欲しいのか。

「お前、心当たりあるだろ」

図星。顔を顰めてしまった。

しかし、俺なんかが愛なんて貰っていいのだろうか。

『愛』というととても大きなものを想像する。一人の人から、沢山のものをもらう。そういうのが愛だと思っている。

「愛、……愛が欲しい」

左之助は犬歯を見せながら大きく笑う。

それは馬鹿にしているんじゃなくて、とても嬉しそうだった。

「そうかそうか。齋藤は、愛は貰ったことなかったか?」

「……ああ、貰ったことはない」

渡したことはあるのだろうか。考えたって、俺には覚えていない。

「なんか勘違いしてそうだから言ってやろうか?」

「なんだ」

俺の胸の辺りを強く人差し指で押した。強く、心に訴えているようだった。

「愛はそこまで高いところには居ねえ。小さな愛だって、それは愛なんだ」

そう、そう思っていた。けれど、どうも俺の欲求が邪魔して、それを認めたくなかった。

しかし、左之助がそう言うのなら、俺は小さな愛でも満足できるはずだ。

「……俺は、愛が欲しい」

もう一度、今回は芯のある声で。本気で。

先程よりもより一層明るい笑顔で、齋藤は俺の肩を叩く。

「あげてやるよ。小さいのでも、どデカいのでも」

暫く考えて、口が開く。

「俺は、小さな愛が欲しい」

10/29/2025, 1:24:26 PM