私の日記帳。
思春期に入り父親が苦手になった。
嫌い、ではなく苦手と言うのは
同じ空間に居ると必ず、気不味い空気になり
居心地が悪くなるからだ。
それをどう言語化すればいいか分からず
悩んでるのに、平気な顔で勉強はどうだとか
部活はどうだなんて聞いてくるから
無性にイライラして口を利かなくなった。
昔は良かった
肩車は好きだし、大きい背中に乗れば
何処までも連れてってくれる
好きなお菓子があればこっそり買って
置いといてくれる優しいパパだった。
大きくなって、友達が自慢してた
マカロンが美味しいスイーツの店に
連れてって欲しくて
スイーツ食べたいなってアピールした時
安い駄菓子が部屋のノブに掛けられてるのを見て
ガッカリした。
それぐらいから、父親がわからなくなった。
今日、そんな父親が死んだ。
信号無視の車から女の子を庇って轢かれたらしい
女の子は泣きながら私達に謝った
私と良く似た髪型の子だった。
家に帰り、リビングでぼーっとしていると
ママが何か持ってきた。
父親の日記帳らしい。
ママも見たこと無いから
一緒に見よう、と持ってきた。
××年×月×日
子供が産まれた、良く頑張った××!
とても可愛い女の子だ、こんなに小さいのか
凄いな!凄い!来てくれた!ありがとう!
××年×月×日
手に指を近付けると、見た目よりずっと力強く握ってくる!もぞもぞと良く動く、将来はスポーツの道に進むのかも、今のうちに貯金頑張るか!
××年×月×日
パパって言った!パパって言った!パパって言った
絶対に!ぅあーしか言えなかったのに
こっち見てパパって言ってくれた!
こんなに嬉しい事はない!
ママはこの時点で、色々と思い出して
泣いていた、私も少し泣いてたかも。
そこからずーっと見ていたが
わたしの事しか書いてない。
これは、私の日記帳なのだ。
最後の日記を読んだ時
私もボロボロに泣いていた。
私が避けていること、どう接したらいいか
わからないこと、でも部活を頑張っていること
テストが良くなかったから塾に入れようとした
ママを説得し、部活に専念させたこと。
全部、全部私の為にしてきた事が書いてあった。
私は、日記帳の余白にその時や今思っている事を
追記する事にした。
ありがとう、覚えてるよ、嬉しかった
悲しかった、全部正直に書いた。
火葬場で、パパの棺に日記帳を入れた。
ママが良いの?って聞いてきたが
私もパパに伝えたいから、と言うと
ママは、そうね、と泣いた。
パパ、ありがとう
お互い直接言えれば良かったけど
私も、パパに似てるから
ちゃんと読んでね。
私の日記帳は
パパの下へかえっていった。
8/26/2024, 12:04:28 PM