「部屋の片隅で」
もう嫌だ、学校に行きたくない。どうせ虐められる。俺なんかが居なければいいんだ。
なんて思いながら、今日も学校を休んだ。
お母さんもお父さんも、俺のことを一ミリも気にしていないようだった。
家に帰れば夫婦喧嘩。お金関連で上手くいっていないように思う。なのに、両親がいる部屋では、大人の行為をしているようだった。
「大人の考えていることは、分からないな」
助けを求められる状況でもなければ、弟がいるのに兄としての役割を果たてもいない俺は……。
だからって学校に行ったら、また同じような虐めが……。
頭がこんがらがって嫌になる。部屋の片隅でただ蹲るだけの生活はよくないにしても、今はそれだけが唯一の抵抗みたいなものだ。
「両親に言ったら、助けてくれるのかな」
そんな期待、抱くだけ無駄なのは分かる。
でも、もしもの事があれば、きっとわかってくれるだろうか。期待してもいいのかな。
なんて……俺のワガママで良くないことだと言われちゃうよな。だって俺、兄貴だし。弟がいるし。
平和ボケしてアホヅラをしても、良い点数取って両親に喜ばれて、しかも友達がすぐできやすい弟とは大違い。
……俺は、出来損ないの兄貴だ。
「そんなの、思いたくない。のに、思っちゃうんだよ。どうすりゃいいんだよ。嫌だ嫌だ嫌だ」
目の前で行われていた大人の行為を見てからも、胸の変な違和感に悩まされてる。モヤモヤと言えばいいのか、それとも苦しいと言えばいいのか。
弟がいるから、という言い訳だって、本当はしたくない。でも言わなきゃ、お母さんがヒステリック起こして怒鳴るんだもの。
男の子でしょ!とか、男のくせに泣くな!とか。
『男だから』って何?男として何も果たしていなければ、俺が虐められていてもいいんだ?
「親が分からない」
「助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて」
涙が止まらなくなってしまった。
人生を終わらせるには、今しかないと思う。
なので、遺書とか残さず、首を吊ろう……ああ、やっと楽になれる……。
なんて思ってたのに、ロープを柱と自分の首に括り付けてから、まだ死にたくないと思ってしまった。
最低だ。もう嫌なのに。生きたくないっていうのに。
溢れ出る涙に、俺は崩れ落ちた。また、部屋の片隅へと、落ちた。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
結局、部屋の片隅で蹲ることしかできなかった。
本当に最低な生き様だよ。だから今日も、学校を休んだ。
12/7/2023, 9:20:20 PM