「特別な夜」
こんな特別な夜には、2人で散歩をしよう。
ロマンチックな星空の淡い光を頼よりに、暗闇の道を進んでいく。人なんて1人もいなくて、君が吐く息の音だけが僕の鼓膜をくすぐる。
「ねぇ、綴。私は大人になったらどーなるのかな?」
どこか寂しげな声で言う君。
そんなの、分かんないよ。と僕は返す。
将来どうなるかなんて誰にも分かんないさ。
「でも、不安じゃ無い?暗闇を歩いてるみたい」
そうだね。でもさ、君には僕が居るから。
僕たちはずーっと一緒だ。毎日を一緒に過ごす。片時だって離れることはしない。
「ありがとう。」
優しい音色。明るくて、でもどこか儚げてそんな君の声が僕は大好きだ。
「綴、でもね。私もう生きてるのに疲れたんだ。」
海を目の前にした時、君はそっと言った。
耳を澄まさなければ、消えてしまいそうな声で。
あの時ずっと一緒にいるって言ったじゃん!今は、今はまだ子供だけど、大きくなったら結婚するんでしょ?
「まだ覚えてたの。もう3年前の話なのに。」
僕たちを必要としてくれる所はきっとこの世界の何処かにあるよ!
「きっと、きっと?そんな物にもう縋れないよ。ごめんね。綴。」
僕も死ぬ。
驚いたように目を見開く君。月明かりに照らされた横顔はとても綺麗だった。
ずっと、一緒だって言ったでしょ?
「うん、」
自然と涙がこぼれ出してくる。あぁ、なんて綺麗な日だ。海へ一歩踏み出す。波が僕らを飲み込む。
あぁ、特別な夜だ。きっと僕の人生の中で1番。
愛してる。
1/21/2024, 1:20:13 PM