青波零也

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 それじゃあ、また明日。
 帰宅を急かすチャイム、暮れゆく赤い空を背に、そう言って手を振るそいつに向けて、俺も「また明日」と手を振り返したのを覚えている。
 また明日。他愛ない別れの挨拶。
 けれどその言葉が、壊れてしまいそうだった俺をかろうじてつなぎ止めていたのだと、今ならわかる。
 そして、きっと、あいつも同じ。
 俺たちには、明日がある。また、あいつと会える。
 寄る辺のなかった俺たちにとって、それは他の何よりも大切な、たった一つの「約束」だったんだ。


20250304 「約束」

3/4/2025, 11:16:13 AM