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“神様が舞い降りてきて、こう言った”



 寂れた場末の酒場の一角。カウンターの隅にあるその席は、朝から晩まで入りびたる金払いだけはいい素性不明なアルコールホリックの為の特等席になっていた。そして今日も朝から酒を浴びるように摂取している哀れなアルコール中毒の男の目の前には頬杖をついて男を眺める神様の様にキレイな顔をした男が座っていた。

 「いいご身分じゃあないか。こんな良い店で昼間っから酒に溺れているなんて」
 「贅沢をしてて、悪いね。昼間どころか、朝からアルコール飲み放題だよ」

 彼はペットボトルに入ったミネラルウォーターをチャプチャプと揺らしながら、ペットボトル越しにアルコールホリックの男を、つまりは俺を覗き見ている。その青空を写した様な目は昔と変わらない真っ直ぐで純粋な色をしている。アルコールで濁りきった俺の目にはあんまりにも眩しくて温かくて、思わず逸らした目線の先に彼の細くて白くて傷だらけの腕が映る。
 少しだけ、傷が増えただろうか。じわじわと傷が減ってきた己の腕が情けなくて忘れる様に酒を呷る。目の前の神様は何が楽しいのか青空色の目を少し細めてやっぱりペットボトル越しに俺を見ている。

 「平和な生活には馴染めないんだろう?」
 「……じきに馴染むさ」
 「お前が一番わかっているくせに」
 「君にはわからないよ」
 「お前のことは、俺が一番よくわかってる」

 お前以上にな。身を乗り出して囁いた彼はそのまま俺の手にあるグラスに口をつけて顔をしかめた。匂いでわかっていただろうに、馬鹿なやつだなあと残った酒をいっきに呑み干す。これだけ呑んでも酔えない身体が恨めしい。酔えたら全てを忘れられるのに。目の前の彼のことだって。
 少し水が減ったペットボトルを、やっぱりチャプチャプ揺すっている彼は最後にあったときより幾分伸びた横髪を耳にかけて微笑んだ。俺が初めて見た時からずっと苦手なその神々しいとも言うべき綺麗な笑顔を貼り付けて、俺の神様は傍若無人にこう言った。

 「戻ってこい、俺のところに」

 俺の答えを聴く気もなく立ち上がった彼の後ろを追いかけた。


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長めのお題は難しい、、、ので少しだけ改変しちゃいました
誰かのことを神聖化してみてる人が好きです

7/27/2024, 3:44:30 PM