「きんもくせい」高い鼻をこちらに向け、アイツはゆっくり息をする。今日選んだ香水は金木犀。俺の肌から揮発した香水の分子が、アイツの嗅神経の末端に付着している。それだけでなんか胸が高鳴る。アイツの皮膚を通り抜け、隠された秘密に忍び込んだような感覚。「いい匂いだね」そう言い残し、アイツは帰って行った。俺から離れても、俺から揮発した分子はアイツに微かな記憶を刻んでいる。
8/31/2023, 10:09:34 AM