No.42:星
#人外Rさんと
どれだけ手を伸ばしても、手の届かない
僕は何処までも飛んで行けるのに、彼をこの手に留めて置く事が出来ない。
まるで流星のよう。
そこにいたと思ったら、生き急ぐ様に先へゆき、いつ間にか目の前から消えている。
それが、彼だった。
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美しい満月が、空を彩る夜だった。
彼と僕は、小洒落た雰囲気に似合わない缶ビールを開けながら、月見をしていた。
...まぁ、僕は別に空の星には興味が無いのだけれど。
「〇〇ちゃーん?飲み過ぎだよ〜?」
「ん...もぉしゅこし...」
「いや呂律回ってないからね??」
僕がそう言っている間も缶を煽るものだから、流石にマズいと取り上げた。
すると酔っているせいか、こちらに顔を近付けながら、拗ね全開に頬をプクりと膨らませるものだから本当勘弁して欲しい。
「ん〜...」
「......」
彼の顔が僕の真正面に来た事で、彼の星が良く見えるようになった。
「...星が綺麗だねぇ...」
ふと、そんな言葉が口を滑った。
...気が付いたら頃にはもう遅くて、彼はぽかんっとした顔を浮かべていた。
「あ、〇〇ちゃんっ、これは、その、」
「なぁに、いってんだよ...今夜は月のが...きれい...だろうが...」
「!!?」
うわ言のように呟いた彼は、そのまま僕の胸に倒れ込み、眠って立ててしまった。
辺りには、彼の寝息と優しい風の音だけが響いている
「......あー...もぉ...」
少し経って、僕は片手で顔を覆った。
彼は酔っていたのだ。多分明日には記憶もないし、言葉に深い意味などないのだろう。
...でも、でも、
...少しだけ、ドキドキしてしまった僕がいた
「...はぁぁぁ...」
本当、狡い、ズルすぎるよ、〇〇ちゃんは
「...君は、僕の気持ちなんて知らないのにね」
そう呟きながら、僕は胸元に収まる彼の頭をそっと撫でた
...どうか、この出来事をもう思い出さないでと願いながら
3/11/2025, 12:31:44 PM