二次創作 文豪ストレイドッグス
『無償の愛情を与えてくれる先輩夢主とそんなことが初めてで困惑する太宰(15)』(夢主、死ネタ注意)
「生きる意味が無いと思うのなら、私を生きる意味にしてみればいいんじゃないか?」
先輩は僕にそんなことを言った。
最初は「何をふざけたことを……」って思ったよ。
「先輩を生きる意味にする? 馬鹿なこと言わないでよ」
「やっぱ太宰はそう言うよねー。よし、じゃあこれから私は君に愛情を与えよう! あ、勘違いしないで欲しいんだけど、これは憐れみの意味とか同情とかそんなんじゃないから。それで君が大人になったら私に同じ分の愛情を返すんだ」
その日から、先輩は僕に愛情というものを与えはじめた。
任務で疲れて帰ってくると、何故か僕の部屋の鍵が開いていて「おかえりー」と笑顔でフライ返しを片手に出迎えてきたり、「ご飯出来てるよ」と言って作りたてのご飯がある。
執務室でずっと書類作成をしてると、「あと一息!がんば!」なんて言いながら僕の分の仕事を半分持っていく。ついでに淹れたてのコーヒーも置いていく。
僕が任務だったりで怪我をして帰ってくると、「大丈夫!? どっか痛いところとかある?」なんて大袈裟に心配する。
「先輩は何がしたいの?」
僕がある日ふと聞くと、先輩は
「え? 特になにも。太宰が大事だから心配したり、世話やいたりしちゃうんだよね」
なんて言う。
「それも愛情なの? 僕はこれを返さなくちゃいけないの?」
僕がそういうと先輩は、?という顔をした。
「あ、あぁ。あれか。あれはね、嘘」
「はぁ!?」
「ごめんごめんw あの時の太宰はああ言わないと素直に受け取らないだろうからさ。思えば、太宰は初めより随分丸くなったね」
先輩はふにゃっと笑って僕に言う。
「これも私の愛情のおかげ、かな?」
「……かもね」
柄にもなく、特に考えずに喋ってしまった。しまったと思って先輩を見たら、先輩は顔を赤くしていた。
「え、何その顔」
「ご、ごめん。珍しくデレたから」
あの日から3年が経った。
今は、先輩はもう居ない。先輩は織田作の死後、残っていたミミック兵に不意打ちされて死んでしまった。
先輩は、不意打ちの直前、私にこんなことを言った。
「やっぱり、私では君の生きがいにはなりえないな」
そう言って苦笑する先輩に、私は何も言わなかった。わざわざ言うのが恥ずかしかったから、いずれ言おうと思っていたからだ。けれど、こうなるのなら言っておけば良かったと何度も後悔する。
「とっくに私の生きがいになってましたよ」
先輩にあげたいもの。沢山あったのになぁ
お題:愛情
2023 11 27
11/27/2023, 10:06:17 AM