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人は愛する季節の向こうに
永遠を夢見るのだろうか
一年でもっとも美しく
わびしく慕わしい秋に
どれだけ思い出を作っても
どれだけ日々を愛おしんでも
まだ飽き足りないらしいのだ

金木犀の匂いの中に
子どもの頃から年老いるまでの
記憶の断片が閉じ込められ
たったひとつの匂いから
時を自在にさかのぼり
悲しさや淋しさやよろこびを
ふたたび取り出そうとしている
無意識に 無自覚に
年々それは行われる
季節に囚われた者に課せられた
通過儀礼であるかのように


#秋恋

9/22/2022, 3:54:46 AM