おじいさん、聞いてくださいな。
わたしはね、欲張り婆さんなんて呼ばれているけれど、おじいさんも知っての通り、そんなふうに生きたくはないんですよ。日々感謝をして、人様のご厚意も申し訳無く思いながら受け取っているくらいなんです。
それなのにね、あんまりじゃあありませんか。
お腹をすかせて米でできた糊を食べただけの雀さんの舌を、あろうことかハサミで切るなんて。それがわたしの役目だなんて、酷すぎるでしょう。あんなに可愛らしい雀さんの小さな舌を切るくらいなら、わたしは舌を噛んで自害してしまいたい思いですよ。
でもね、ちゃんと分かっていますよ。
わたしがその役目をまっとうしないことには、世に言う『舌切り雀』のお話にならないことも、ええ、分かっておりますとも。
だからね、わたしは明日も意地悪な欲張り婆さんとしてハサミを振るうし、重いつづらだって背負いましょう。
こうして毎日糊をこしらえるのだってね、本当はもう飽き飽き。だけど、これがわたしに与えられたお役目なんですから、まあ、やっていくしかありませんよねえ。
おじいさんも、舌を切られると知っていて、毎日雀さんを捕まえてくるのは、さぞやお辛いでしょう。分かりますよ、わたしには。
仕方ないことですものねえ。明日も頑張りましょうかね。
(逃れられない呪縛)
5/23/2023, 6:53:18 PM