海老body

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「日が沈む前にあそこに先に着いた方が勝ちな!」
そうやって、いつも私は置いていかれた。
男のくせに私に手加減とかしないで、ずっとずっと走っていく。
置いてかないでよ。手を引いてよ。
一緒に連れてってよ。

「じゃないと、追いつけない……」
いつかのゴール地点で一人、しゃがみこんだ。

10歳の夏、事故で、私は突き放されて。
惨めに尻もちをついて、文句の一つでも言ってやろうと思って見上げた先には、もういなかった。

隣に立とうと努力をしてきた。
いなくなった後だって、何だか勝ち逃げされたようで悔しくて、努力をひたすらに積み上げた。
足りないまだ足りない。
名前の知らない感情に身を焼かれながら、
そうして、10年がたった。

そして今、あの時のスタート地点に立っている。
目の前に沈みかける夕日に、なんだか急かされている気がして、意味もなく走り出した。
誰もいないこの道を一人で走る、なんて滑稽なんだと頭の隅で思ったけれど。
気づけば、いつかのゴール地点に立っていた。

ああ、懐かしいなあ。何回も何回も二人で走って、結局追いつけなかったなあ。
もっと私が頑張れば、隣にたてたのかなぁ。

押し寄せる思い出と付随してきた思いに、心がぎゅっと潰される。耐えきれなくなって、しゃがみこんだ。
そうだ、隣にたちたかったんだ。
ひたすらに追いつこうと走っていたあの頃も、がむしゃらに意味もなく頑張り続けたあの頃も。

そうか、名前の知らない感情は恋だったのか。
ポロッと流れる。

夕日は一際強く輝いて、沈んだ。

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『裏、汝を殺すであろう』

4/7/2023, 3:40:22 PM