仮色

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【芽吹きのとき】

目の前には、貴方がにぱっと笑った笑顔。
前までは何でもなくて、何にもなくて、ただただ自分も笑い返していたそれ。
天候的な条件が揃って後光が差しているとか、そんなマンガ的な状況でもなくて。
例えそんな状況であったとしても、前ならただただ綺麗だなとか、素敵な笑顔だなとか、そんなことを考えていたと思う。

でも、
でも、今は、

「どした?」

ああ、髪で耳が隠れていて良かった。
生憎耳から赤くなっていくタイプなもんで、昔はそれが嫌だったけれど今だけは感謝できる。

「なんでもないよ」

別に、天気が特別良いわけでもない。
貴方が特別おしゃれしているわけでもない。
悔しいけれど恋している少女の表情なわけでもなかったし、何気ないひとつの感情の動きなだけであった。
でも、貴方の笑顔は凄く輝いて見えたし、それを見た瞬間から身体の底からじわじわと熱が上がってくるのが自分でも分かった。

えー、と。つまり、つまり、ね?
うーん、もう包み隠さず言ってしまうと、

恋の芽生え、というものを私は今味わっているのでしょうか…、?

3/2/2025, 10:08:55 AM