由希

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叶わぬ夢

「貴女って主体性がないわよね」

先輩に言われたこの言葉に衝撃を受けた
習い事、進学、就職 全てを母親の決めた物や場所にして、母親の望む結果を出してきた
母親の望むものの中には私の気持ちは一切 入っていなかった
全て「お母さん」が主体で「私」は一切いない

「そう…です…ね…」

なんと答えていいか解らず、そう返す

「貴女は立派な社会人よ
全て親の望むことをしなければ生きていけない子供じゃないの
もう…いい加減、親離れしなさい…」

ぽんぽんと優しく頭を撫でられ、涙が止まらなくなった
小さな子供の様に声を上げて泣いた
何で涙が出るのか、どうやったら涙は止まるのか
何もかもわからない
そんな私を先輩は優しく抱き締めて「大丈夫よ」と言い続けてくれた

「先輩、私…
叶わぬ夢と切り捨てた道に進みたいです…」

目を見てそう言うと先輩は慈愛に満ちた笑みを浮かべて「応援してる」と言ってくれた

「叶わない」と諦めた事は数え切れないほどある
時間はかかるかもしれない
それでも私の気持ちを大事に育てていきたい
そう思えたできごとだった



ーーーーーー

大好き

「大好きだよ!」

「はいはい、ありがとな」

そう言って私の頭をぽんぽんと叩く
幾度となく伝えてきた私の気持ち
一体いつになったら相手に正しく届くのだろう?


ーーーーー

どこ?

「あれ取ってー」

「どこ?」

「その辺!」

「はい」

「ありがとう!」

こんな主語のない会話が成り立つ人は数少ないだろう
その証拠に『熟年夫婦か!www』と友人達には笑われる

3/19/2025, 10:29:44 AM