佐吉智明

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20.星が溢れる


――今日ですべては終わりにしようと思っていた。


この夏が終わったら死ぬつもりだった。
数え切れないほどの失敗を繰り返してきた。
人に迷惑をかけてばかりの恥の多い人生だった。
生きる価値も考えられなかった。

生まれた地は田舎だった。
育った地は都会だった。
人間が破壊してきた多くの自然、生命。
街を通る車に電車、どんな木よりも高くそびえ立つ高層ビル。
すべてが邪悪な空気をまとっていて、息苦しかった。
もう滅んでしまった生命の叫び。
聞いていられなかった――。

生まれた地には森があった。
唯一、人間に手を入れられていない聖域。
夜だった。

「未来になんの希望も持てないので、いま、はやく楽になろうと思います。これがわたくしの幸福です。」

間違いはないと信じて、上を向いた。
空には、無数の星が輝いていた。
届きそうで届かない、そんな遠くにある光。
精一杯光って、光って、希望の存在を訴えていた。
ここに届いているこの光は、何年前のものだろう。
その何年ものときを超えて、希望は残っていた。

神さまが間違えて星のミルクをこぼしてしまったような、天の川。
いつの間にか、目には涙が溢れていた。
この世界のすべてが、美しいと思えた。
もはや、死にたいとは思わなかった。
この目から溢れて零れ落ちた涙が、空で希望の星となって瞬いていた。
眩い。

希望で溢れている。


――空に、星が溢れている。

3/16/2024, 5:57:46 AM