首元に生ぬるい吐息がかかった
金曜の夜のテレビではもう何回かみた春の定番映画が軽快に流れている
視線はテレビのままで
先ほどから私の乳房を探すその手を
睨みつけ気だるげに払った
「コーヒー淹れてくる」
せめてもの言い訳が
テーブルのまだ温かいコーヒーの湯気に溶けて消えた
キッチンで行方のない視線を漂わせて
目にはゆらゆらとそのまま落ちてしまいそうな視界を宿していた
冷蔵庫が低く唸りごえををあげる
遠くなった映画の中のカーチェイス
世界においてかれて
そこには私しかいないみたい
脳内では無意識に
挨拶でもなければ愛撫でもない
その体温が私に触れる意味を探していた
答えはどこからも与えられない
わたしはいったいどこに行ってしまったんだろう
コーヒーの苦味は癒しはくれない
冷蔵庫から冷えた缶を2本取って少しくたびれてきたソファに戻った
「呑む?」
液体に望むのは解放か、逃避か、或いは…
プシュ
『悪い癖』
5/13/2026, 10:42:43 AM