「君と一緒に」
君と一緒にいたい。
ただ、それだけでよかったのに。
地図にも載らないようなところに、ある村があった。
そこには、子供はほとんどいなかった。
特に女の子は、生贄として殺してしまう。
そんないかれた村だった。
僕は、そこの生贄の少女を管理する役についた。
昔から僕は、感情が乏しかったから。
人が死んでも、悲しまない。
喜怒哀楽が、欠落していた。
何人もの子に恨まれた。
でも。
やっぱりなにも感じなかった。
そんなある日。
新しい贄の子が、僕のところにやってきた。
その子は、殺されると言うのに、底抜けに明るかった。
一緒にいたのは、一年ほどだろうか。
その子は逃げないから、傷つける必要もなかった。
その子といると、冷めてなにも感じないはずの心が、暖かい気なっていく気がした。
その子が贄となる前日。
君は、生きたいと言わなかった。
ただ一言。
小さく。
好きだよ。
と言うだけだった。
その時。
好きだと返せなかった。
そのまま眠った。
いよいよ君を殺すため、崖に落とされる時。
僕の体は、動いていた。
大人の声が聞こえる。
君と、落ちる。
落ちる。
落ちる。
落ちる。
ぶつかる。
地面に擦れて、息も絶え絶えになりながら、僕は絞り出す。
僕も。
好きだよ。
君は、途切れ途切れに言う。
君と
一緒に
明日を
行きたかった
な。
うん。
そうだね。
僕らは、目を瞑った。
1/6/2025, 1:52:03 PM