春一番

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 青雲と蒼原はちょっとオシャレなカフェで向かい合いながらお茶を飲んでいた。

「身長がもう少しほしいなあ」

「歌がうまくなりたい」

「最近絵を描くからTabletがほしい」

「ガンプラ再販しないかな」

「旅行に行きたい」

「かっこよくなりたい」

「旅に出て、世界を見たい」

「頭がよくなりたい」

「お金がほしい」

「熱中できる何かを見つけたい」

「夢を見たい」

「美味しいものをたくさん食べたい」

「人の気持ちを知りたい」

「コミニケーション能力を身に着けたい」

「明日雨が降ってほしいなあ」

「僕は晴れてほしい」

「散歩がしたい」

「新しいイヤホンがほしい」

「沢山本を読みたい」

「ゲームを全クリしたい」

「今書いている小説こそは完結させたい」

「ああ、あと」

「「大切な人の側にいたい」」

 二人の声が重なり、どちらともなく笑い声が漏れる。

「けっこう私たちってないものねだりなんだねえ」
「そう?もっとあってもいいんじゃない」

 青雲と蒼原は上げていった言葉を指を折りながら数える。

「叶えたいことがあると、世界は急に輝いて見えるもんねえ」
「そうだね、だったらたくさんあったほうが生きていて楽しくなるね」
「そのとおりだ」

「ねえ、もっとあげてみよう。私たちが生きるのを楽しめるように」
「…しょうがないな」

 ため息をつきながらも蒼原の顔には笑顔が浮かんでいる。二人はまた、一つずつ欲しいもの、叶えたいことを交互に上げていく。

 そんな穏やかな春の昼が下がり。

3/26/2023, 12:24:33 PM