最初から決まってた
葉巻を吹かしている。薄くにじんだ煙が部屋を満たしている。知らない人が目にしたら火事じゃないかと吃驚するかもしれない。
ふと、なぜ私は葉巻なぞ嗜んでいるのだろうと思った。紙煙草のほうが余程かんたんだ。父も祖父母も愛飲していた。母が吸っているところは一度もみたことがなかった。顔の形が記憶の中ではっきりしないほど久しく逢っていない愚弟は、いつの日からかシーシャ屋に通っているらしい。
嗜好は千差万別。何を好もうが個人の勝手で、そこに決められたルールなどない。それは今生きる社会の上では、実に素晴らしいことのように思えた。私は、すっかり鈍くなった舌を酒で濡らしてから、再び葉巻を手に取った。
8/7/2024, 3:32:25 PM