Open App

「君は本当の夜空を見たことがあるかい?」
そう聞かれたのは私が大学2年生の頃、教授の展望台のお手伝いに来た時だった。
「そりゃ見たことありますよ。誰でも。」
至極当然の文字を貼り付けたような顔でそう返した。すると教授が悪戯っぽい笑みを浮かべながら「本当かな」と言いながら望遠鏡の席を私に貸してくれた。
私は天文学ではなく地学が専攻だったので星については少し齧った程度で実際に望遠鏡で天体観測をするのは初めてだった。
のぞいた時私は望遠鏡ではなく万華鏡を誤って見たしまったと勘違いしてしまったくらいその景色は美しかった。
一等星や二等星など光がバラバラで色もバラバラに夜空に散りばめられている様子は宝石箱をひっくり返したようだった。
この経験から私は地学から転科届を提出して天文学を専攻するようになった。
そしてそれから数年経ち私が天文学者になると私は2年ぶりに教授に会った。
教授はあの日と何も変わらずに穏やかな笑みを浮かべていた。
「どうかな。天文学者になって」教授がそう聞いてきた。
「毎日、楽しいです」と返す。
それから数回の会話を挟んで私と教授は別れた。
今も浮かべる教授の顔はいつもあの夜空と結びついてきらめいている。
お題きらめき
ここまで読んでいただきありがとうございます。
最近不定期で申し訳ないです。

9/5/2024, 2:30:28 PM