与太ガラス

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 窓を覗き込むと、千々に破れた雲が嵐の中をのたうち回っているようだ。轟音もガラス越しでは小さくくぐもって聴こえる。

 朝のコインランドリーに人はまばらだ。かと言ってこの空間をひとりで占拠できるほどではなかった。最近ではコーヒーを出すコインランドリーもあると聞くけど、この町にそんな気の利いた設備があるわけもなく、昔からある洗濯機で回る雲を眺めるぐらいしかやることはない。

 1週間分の洗濯物を詰め込んで、自転車の前カゴに入らないから背負ってくる。乾燥が終わるまで待っている必要もないけど、他に時間を潰せる場所もない。

 外は澄んだ大空が広がっているだけだ。

 雲ひとつない空を見ているくらいなら、嵐の中を蠢く洗濯物を見ていた方が楽しい。規則的な回転の中を不規則に衣類が踊る。その混沌は「f/1ゆらぎ」のようで心地よい。

 窓からのぞくドラムの中は胎児の記憶を呼び起こされるようだ。ずっと静かに、この胎動を眺めていたい。

 ゴロゴロゴロ…ザ…ザーーー

 洗濯が乾燥に切り替わった頃、外の景色が一変した。大空は突如として雲に満たされ、雷鳴が響き始めた。

 ああ、自転車で来てる。

 乾燥が終わったら、しばらく窓の外を眺めていよう。

12/22/2024, 1:01:56 AM