一ノ瀬 奏

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#3 星に包まれて

彼と出会った日。
私ははっきりと覚えてる。
一昨年の七月七日だ。
その夜、私は行き場所を無くして、途方に暮れていた。
満点の星空の下で。
上京してきたはいいが、アパート契約の日を盛大に間違えたのだ。
お金は十分持っていたものの、肝心の宿がなかった。
運悪く観光シーズンに被って、予約をしないと宿が取れない状況だ。
何件ホテルを回っても
「すみません満室でして。」
と申し訳なさそうに切り捨てられてしまう。
今日は野宿か。となんとなく公園を検索してみる。
五分ほど歩いたところに星が綺麗に見える公園があるみたいだ。
そこでいいや。
そう思って歩き始めた。
公園につくと、そこには先客がいた。
星に夢中で私に気づいていないようだ。
瞳にきらりと天の川が反射する。
思わず、
「綺麗。」
と呟く。
すると男はちら、とこちらを見た。
パチっと目が合う。
二人の間に沈黙が落ちた。
沈黙に耐えきれなくて、何か言おうと口を開く。
その時、
「そんな大荷物で、どうしたんですか」
男が先に聞いてきた。
「えっと、家、なくて、」
それを聞くと男はぷっと吹き出して、
「家出?」
なんて聞いてくる。
「違いますよ!アパート、契約の日間違えてて、ホテルも入れなくて、」
恥ずかしくって、最後はほとんど声にならなかった。
「あー、じゃあ部屋、貸そうか?」
ナンパだ、とか怪しむべきだったかもしれない。
でも、私の心は折れかけで、その言葉が唯一の希望だった。
すぐさま頷いて、
「お願いします」
そう口に出していた。

12/30/2025, 12:28:07 PM