山百合

Open App

・5

『月に願いを』

私がまだ若葉を付けていた頃

人々は戦地に赴いていた

皆が飢えていた

私の根本にはいくつもの死が重なっていた

私の青い実は徐々に赤く熟れてゆく

月を見上げこれ以上、人々の死を養分にしなくてすむように祈った

【続く】

5/26/2024, 2:06:22 PM