うみ

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 ──いただきます、が言いたかった。


 鋭い橙色がこちらを見下ろしていた。それが怒りと、何よりも心配を孕んでいることは明白で、そんな表情をさせてしまったと申し訳なくなる。

「俺、言ったよな?」
「……ああ」
「しばらく忙しいから帰って来られないけど、ちゃんと飯食えって言ったよな?」
「……食べている」

 直視できなくてダイニングテーブルに視線を落とせば、呆れたような声が返って来る。

「あのなぁ、カロリーバーはあくまでも栄養を補助するものであって、主食にするもんじゃないんだよ。ずっと続けてれば限界が来るだろ。……最後にあったかい飯食ったのいつだ?」
「……みっかまえ」
「俺が帰ってこられ無くなった初日からかよぉ」

 静かに顔を上げると、呆れを通り越して橙の瞳が冷たかった。……冷たい太陽もあるのか。セーターの裾を手で強く握りしめる。

「何食いたい?」
「……?」
「好きなもん作るから」

 作って、くれるのか。約束を破ってしまったのに。  
 冷えていた指先が、じわりと熱を持った。


(愛情)

加筆します

11/27/2024, 12:59:11 PM