やるせない気持ちで
向かい合わせの誰もいない席を見つめる。
テーブルの上には私の日記帳。
あの日、扉を開けると、
雨に佇むあなたがいた。
髪の先から靴の先までずぶ濡れで。
突然のあなたの訪問。
それだけで、もう、言葉はいらなかった。
ただお互いに、しがみつくように抱き合った。
わたしの香水、そんなに強くないのだけれど、あの日のあなたに移っただろうか。
いっそのこと、芯まで深く染み込んでしまえばいいなんて、思ったり、思わなかったり。
「人として不完全な僕は自分勝手なことをした。」
そんなのわかったことなのに。
わたしだってそれは同じでわかっていたのに。
あなたからの何件かの通知。
業務連絡かもしれないというのに
開けないLINE。
どんなことであれ、仕事以外のことなら読むのがこわい。
これからはまた以前のように、ただの仕事の付き合いとしてやっていきたい。
たぶん、あなたもそう思っているはず。
あなたを思い続けるわけでは決してないけど
わたしはこの先結婚なんかはしないのでしょう。
だから、この思い出は日記帳に閉じ込めて、わたしの人生の中でもこんなことがあったという、心の灯火のようなものとして胸にしまっておきたい。
そして同じ灯が、あなたの中でも小さくても灯り続けていて欲しいなんて考えるのは、それさえも、許されないことなのだろうか。
テーブルの上に突っ伏して、少し色のついたようなため息をついた。
70作突破記念
「心の灯火」
7/15 20作 7/27 30作 8/4 40作 8/14 50作
8/23 60作 突破記念の続き。
これまでのタイトルを並べて繋げたもの。
内容は続いていない。
何作突破記念とか言っているがあくまで目安でけっこうてきとうに発動。
反応に関係なく自分が楽しいのでやってる企画。
インターバル的なもの。
9/2/2024, 9:24:17 PM