『友達』
──自分には友達がいない。
某県某所某高校の某季節、某教室の前から某番目、窓際の席でそんな事を考える。
どんな理由があってつくれないのか、そもそも理由があったのか、思い当たる節が無い。
………まぁ、そんな事はどうでもいい。
今回考えたいのは、そんな変わり者の自分にも何故か話しかけてくる変わり者がいる事だ。
──ガラガラ
「おはよう!」
先程勢いよく……と言うには物足りないぐらいの強さでドアを開けて、クラスメイトに明るく挨拶をしている女性。
そう、 彼女が件の変わり者である。
こちらに向かって歩いてくる彼女、正確には彼女に宛てがわれた席であり、自分からして隣の席に向かっているわけなのだが……目線は何故か自分に向けられている。
「おはよう! ○○、そんなに見つめられると照れるんだけど? 何かついてる?」
あぁ……自分も彼女を見ていたのか、それは不思議に思うのも無理はない。
「あぁおはよう、少し考え事をしていてね。○○に関係がある事だったから……つい」
馴れ馴れしくも彼女は自分を呼び捨てにするので、自分も意趣返しとして呼び捨てにしている。
……彼女は、全く堪えていない様だが。
「私について考えてたの? ○○は変わり者だね」
「そうは言ってない、たまたま○○に関係のある事だっただけだよ。それと、○○だって変わり者なのは変わらないだろう?」
「変わり……え、変わ? なんの話……? また難しい事言ってる?」
…………自分は彼女が可哀想になり、懇切丁寧に自分の考えていた事を説明してあげることにした。
よくよく考えれば本人に直接聞けば分かるかも知れない、なんて思いながら。
「そんな事で悩んでたの? 頭は良いのにバカだねぇ」
「……悩んでなんかいない。でも、そこまで言うからには、合理的で論理的に分かりやすく説明する事が出来るんだろうね。そんな事も分からない自分なんかとは違って」
「……拗ねた」
「……拗ねてない」
「えー」
「……もういい」
そう言って机に突っ伏して窓の方へ顔を向ける。
別に拗ねている訳では無い……そう、彼女と話すのが疲れただけだ。
「ごめんって、悪かったから許して? 何で私が○○に話しかけるのか教えてあげるから! ね?」
「…………」
知るものか、絶対に顔を上げてやらない。
「それはね……○○が私の友達だからだよ!」
「──!!」
「……いや、やっぱ違うね」
…………一瞬驚いたがなんて事は無かった。
当たり前だ、自分に友達はいないのだから。
そう……当たり前、別に悲し「大親友だからだよっ!!」…………。
「おーい」
「…………」
「……ねぇ、顔上げてよ。○○の耳、真っ赤だよ」
「…………」
「もういいもん、私も不貞寝するから!」
数分後、頭を少しズラしてチラリと隣を見てみれば、彼女の耳もまた赤かった。
○○の大親友は変わり者で恥ずかしがり屋だ。
──やはり自分には友達がいない。
某県某所某高校の某季節、某教室の前から某番目、窓際の席でそんな事を考えた。
10/25/2022, 5:52:05 PM