「風に身を任せて、どこまでも飛んで行きたい。」
常々、そう思う。いつもいつも自分で考えて、それで失敗して、怒られて。目を閉じれば耳を澄まさなくても叱責が聞こえる日々。そんな日常に私はうんざりだった。
自分が鳥なら、あるいは小さいものなら風になってどこまでも楽に行けたのだろうか。いいなぁ、何も考えずに動けて。いいなぁ、何にも縛られずに生きてて。なんて願っても叶わない理想を、そんな理想への嫉妬を、とうとう君に打ち明けてしまった。君は何も言わずに、少し寂しそうな目をしたまま風に身を巻かれて消えた。私が考え無しに、自分だけが辛いみたいに話してしまったせいなのだろうか。
『どうして』
そんなことを言える資格は、私にはなかった。
「風に身を任せて」
5/14/2023, 1:08:27 PM