ヒトが忙しなく行き交っている
イヌは大口を開けて尻尾を巻き
ネコのカタチの姿は一つもなく
赤々とした警告灯は眩しく
打ち捨てられた鉄硝子が
足元で削り崩れている
吹き飛ぶは紙か布か果たして
何処かにぶつかり潰れたようで
いよいよ世界でも終わるのだろうかと
無くなって久しい耳跡を撫でた
‹静寂の中心で›
「『あの葉が落ちたら』なんて有名な話だが、
どうやら僕もそうらしいよ」
「遂に頭にまで馬鹿が回ったか?」
「本気だよ。秘密にしていたが、
僕には未来が見えるものでね」
「ならばいよいよ医者にかかるべきだな。
其処に植わってるのは常緑樹だぞ」
「知っているとも。僕ですら葉の更新を
お目にかかったことはないね」
「ならば枯れ落ちるまで此処で寝ていると?」
「其処まで時間は掛からないさ。
処で次に来るのは来週だったかい?」
「そうだが。何だ、其処までに植木の入れ替えを
するという落ちか」
「いいや。まあ、此処で会うのは最後だろうね」
「……馬鹿馬鹿しい」
「おいお前聞いたか、あの火事」
「知らん」
「一人って」
「知らん」
「いやだから」
「知らんと言っている」
「……わかったわかった。何処行くんだ」
「奴に頼まれていたモノがある」
「そうかい。ま、一つだけ。
ソレは司法で捌くもんだよ」
‹燃える葉›
光に照らされるが真実で
闇に隠れるのが偽証なら
薄い月明かりに影翳す
君の名前を何と呼ぼう
‹moonlight›
10/8/2025, 9:30:07 AM