towa_noburu

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「遠くへ行きたい」
中学に上がったばかりの頃、私はある日を境にクラスメイトからシカトされるようになった。はっきりとしたきっかけはなかったように思う。ただなんとなく、周りと打ち解けにくかった地味で目立たない奴が標的になった。そんなところだろう。私は最初こそショックで教室で泣いてしまったが、その泣いた光景を見ていた周りのクラスメイトはさらにエスカレートして無視を決め込むようになった。私の心は深く傷ついた。
どうしていいか、わからなくて。休み時間に違うクラスの友達のところへ会いに行ったりしてその場を凌いだ。
私がシカトされている事を知ってもなお、他のクラスの友達、りかちゃんは態度を変えなかった。人によっては、あの子シカトされてるんだと言う噂が伝わり露骨に態度を変える子もいた。
私は帰り道、りかちゃんにぼやいた。
「どこか遠くへ行きたいな…」
りかちゃんは私の切実な感情を深く読み取って、そして返事をした。
「行こうよ、2人で。自転車で、行けるとこまで行こう?」
お金のない中学生の現実的な交通手段は自転車だ。私たち2人はお互いの自転車に愛称をつけるほど愛着があった。
「歩ちゃん、この…チャリ子とチャリ助で行こうよ…!」
りかちゃんは自転車のペダルを鳴らした。
私は目の奥が熱くな涙が込み上げきた。
「うん…うん!そうだね…ありがとう、りかちゃん…いつもありがとう…」

次の日の朝、私は少し早起きして自転車に颯爽と乗り込んだ。
りかちゃんとの待ち合わせ場所までもうすこし。
この丘を超えた先にりかちゃんとチャリ子がきっといる。
私は、はやる気持ちを抑えきれず、前屈みになって必死にチャリ助を漕いだ。

遠くへ行きたい
どこか知らない場所へ行きたい
誰も知らない場所へ行きたい
でも1人だと怖い
けど君がいるから私は乗り越えられる

7/3/2025, 10:24:06 AM