すべて物語のつもりです

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 一年後のわたしはいったい何をしているだろう。
 まばたきを繰り返しても変わらない景色が、うまく言葉にできないこの思いを増幅させる。
 はしゃぐ子どもの声。餌をばらまくおじさんに集る鳥たち。ふたり寄り添って一歩ずつ進む老夫婦の曲がった背中。炭酸を一気に流し込む二人組の男子高校生。
 もうわたしはそれほど純粋でもないし、だからといって悟りを開くことができたわけでもない。大人数のところに入り込む勇気はないし、だれかと二人で並ぶ余裕もない。けれど、一人はとても怖い。
 日が傾き始めた公園の中、彼らは光を放っている。
 そんな彼らの目に、わたしはどう映っているのだろう。ちゃんと光れているだろうか。
 一年前に買ってもらったリクルートスーツはとっくにくたびれた。今日も皺一つないスーツを着た人達に囲まれた。みんな、やっぱり輝いていた。
 一年後、わたしはどうなっているだろう。きっと、わたしが望む光を手に入れることはできていないと思う。
 だって、今のわたしは、一年前のわたしが望んだ姿をしていないから。

6/25/2023, 2:33:58 AM