彗星

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題:「大好き」で満足する私じゃないの

 ママの口癖は「ロゼッタ、大好きよ」だ。
 嬉しいんだけど、それを不満に思う自分もいた。そんな事は、前は思わなかった。
 ……何かが足りない、その何かを足して。
 そう心の中でママに投げかけるけれど、当然ママは気づかない。
 その「何か」を見つけるために、私はママの様子を観察してみた。
 それで気付いた、その何か。それは、
 “愛してる”という言葉。
 ママはいつもパパに、「貴方を愛してるわ」と言う。その”愛してる“を、私にも言ってほしい。
 ーーもう「大好き」で満足する私じゃない。
 そう思った。

 次の日の朝、私の額にキスをしてから、ママはいつもの言葉を放った。
「ロゼッタ、大好きよ」
 ああ、まただ。また、“大好き”という言葉に不満を持っている。
「ねぇママ」
 私は言うことを決めた。
「何かしら?ロゼッタ」
 ママは優しく問いかける。
「もう“大好き”で満足する私じゃないの。だからーー」
 ーー”愛してる“にしてくれない?
「ーー”愛してる“にしてくれない?」
 すこし間を開けてから、ずっと言いたかったことを言った。言えた。
 ママは目を瞬かせた後、ニコリと笑った。
「分かったわ。……愛してるわ、ロゼッタ」

お題『I love』

6/12/2025, 12:19:45 PM