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お題:同情


雨の中、立ち尽くす君がいた
寒そうに肩を震わせている
傘を持って隣を歩く

雨宿りに入った喫茶店
黙って口をつけたココア
ぽつり、ぽつり
君が溢した不安
それでいい、それでいいんだ
じくり、じくり
露わになった友の傷
私にも背負わせておくれ

テーブル越しの君の独白
ぬるくなったココア
じわり、じわり
きつく締め付けられた胸
痛いね、苦しいね
じくり、じくり
君の傷は治せないけれども
痛みが軽くなるまで一緒にいるよ

君を癒す言葉を、望むままに贈ろう
君が望むなら何度でも寄り添おう

雲間から光が降り注いでいる
君の顔は幾分か晴れやかだ
ココアはもう飲み干してしまったようだ
躊躇う君の背中を押す
君は「またね」と告げて外へ駆け出した

君を見送りながら、冷めたココアに口をつける
いつか君も大人になって、独り立ちするのだろう
その時には私の事など、覚えてもいないのだろうね
それまでは君の拠り所となろう

少しでも長く友達でいたい
少しでも長く一緒にいたい
そんな身勝手な願いを込めた優しさに
どうか気づかないで

2/21/2024, 10:40:12 AM