青い、蒼い、色が目に入る。海より青く、花より鮮やかな色が空を見上げればいつも目に入る光景。
何時もあるはずの光景。これがいつか見えなくなる。それがどうしようもなく不安だ。こんなに綺麗なモノを見えなくなる。もう二度と見えなくなる、それが怖い。見えなくなる位なら最初から知らなければ良かった。
でも、もしこの空の色を見ていなければここまで生きてはいないだろう。空の美しいさに魅了され空の壮大さにワクワクして空の偉大さに敬意を抱いた。空は太陽に匹敵するものだ。なぜ神話で空の神が居ないのか、居たとしても主神格ではないのか疑問がわく。
とにかく、僕にとって空は人間の三大欲求と同じ位大事なものだった。僕を救ってくれた。僕に勇気を与えてくれた。僕に前に進むキッカケをくれた空。それが見えなくなる。
僕は目に疾患がある。生まれた頃からの疾患だが今まで平気だった。しかし、歳をとったからか疾患が悪化してしまった。手術しないと命が危ないと医者に言われた。ただし、手術をすれば目は二度と見えなくなる。僕はどうすれば良い。
空を見えなくなる位なら死んだ方が良いとずっと思っていた。でも実際に生きるか死ぬかの二択をするとは思わなかった。
僕は自分でも驚く程にスムーズに医者に言った。
手術はしません。
僕は死ぬんだろう。この選択が合っているなんて思わない。生物的にも、人間的にも間違っているのかもしれない。
でも、後悔はない。僕は空に命を救われた。空の青さがあったから今まで生きてこれた。人間はいつか死ぬ。なら僕は空を見ながら死にたい。空の美しさを見ながら死にたい。
僕の人生の全てを空に使った。こんなに良い人生があるか? 命を使って一つの事を追い求めた。こんな幸せな事があるか? だから僕は後悔はない。
僕は満足だ。
4/13/2024, 7:20:46 AM