前回投稿分と、前々回投稿分を、それぞれ足して繋げたようなおはなしです。
最近最近の都内某所、某深めの森の中には、本物の稲荷狐一家が住まう稲荷神社がありまして、
そのうち末っ子の子狐は、食べるのが大好き!
ひとしきり雨天の縁側で、段ボール在住の「拾ってくださいごっこ」を楽しんだ後は、
同じく美味しいものが大好きな優しい参拝者さんと一緒に、参拝者さんが持ってきたサンドイッチの盛り合わせを、ちゃむちゃむ、ちゃむちゃむ。
分け合って、時には取り合って、あるいはアレンジして、幸福に、堪能するのでした。
I love おこめ! I love 麦! I love 五穀!
コンコン子狐は稲荷狐なので、穀物たる麦で作られたサンドイッチも、もちろん、大好きなのでした。
I love 美味! I love 滋味! I love 風味!
参拝者さんは食いしん坊なので、美味に整えられた料理は、当然のことながら、大好きなのでした。
「おいしい。おいしい」
子狐は尻尾をぶんぶん振って、照り焼きチキンのサンドイッチを、1個、2個。
「タルタルサーモンサンドも、おいしーよ。ちょーっと振ったレモンの酸味、最高だよぉ〜」
参拝者さんも口角上がりっぱなし。サーモンサンドを1個と、塩レモンチキンサンドを1個。
I love 五穀! I love 美味!
子狐も参拝者も、東京のじめじめを吹き飛ばす幸福で、サンドイッチを堪能しました。
「おねーちゃん、この、いっぱいのサンドイッチ、どうしたの?つくったの?」
「ちょっと、図書館でお仕事があってねぇ。
その図書館併設の食堂で、こ〜んな美味で、こ〜んな大盛りの、サンドイッチの盛り合わせ、出してもらえるの。それを、おー持ち帰りぃ〜」
「としょかん! えほん!」
「そうだねぇ。絵本、いっぱいあったよぉ〜」
「サンドイッチ!」
「うん。2皿分ねぇ、ちょ〜っと同僚に、全部一瞬で食べちゃったって勘違いされたけど、お持ち帰りに詰めておいたんだ〜」
さて。
そんなこんなの1人と1匹です。
雨天の縁側で、雨のお庭を眺めておると、
遠くで他の参拝者が2名、長話などしています。
1人は風吹き花咲く雪国の出身、
もう1人は、まさかの滅びかけた異世界出身。
ふたりして傘をさして、長話などしています。
I love 自然! I love 草花!
雪国出身の方は名前を藤森といい、
昨今の消えゆく日本の植物を、悲しんでいました。
I love 東京! I love この世界!
異世界出身の方はビジネスネームをアテビといい、
なかなかに、こっちの世界を気に入っていました。
ふーん、なるほどねぇ。
参拝者さん、2人が何を話しておるのか、だいたい推測できました。
というのも同僚が藤森のことを、ちょっと、気にかけておったのでした。
アレだぁ。異世界のチカラに頼って、この世界のお花を、気候変動とかから守りたいんだなぁ。
参拝者さん、藤森が何をしたいのか、よくよく理解できました。
でも「それ」は、「こっちの技術」で、「こっちの努力」によって、成し遂げられるべきことでした。
「ちょっと行ってくるぅ〜」
子狐を縁側に残して、参拝者さん、藤森とアテビを呼びに行きます。サンドイッチパーティーに、2人も参加させるつもりなのです。
「なんで?おねーちゃん、なんで?」
「こーいうのはねぇ、セカンドオピニオン、第三者、その他諸々、意外と大事ぃ」
さぁさぁ、一緒にサンドイッチを食べましょう。
一緒にサンドイッチ会議を開催しましょう。
参拝者さんも異世界出身。でもアテビと対極の組織の局員だったのです。
「ランチョンテクニックって、言うらしいぃ」
さぁさぁ、一緒に対話しましょう。
いっしょにサンドイッチサミットをしましょう。
参拝者さんは藤森とアテビを強制連行。
3人と1匹で、美味を囲みましたとさ。
6/13/2025, 4:46:57 AM