『大好きな君に』
出会ったときは「なんで?」だった。
好きじゃないって言ったのに、と文句を言ったら叱られた。
それなのにわたしが世話をしろと言われたのは納得できなかった。
「この子にしたらお姉ちゃんみたいなものでしょ?」
それならお母さんたちは親みたいなものじゃない、とはもちろん言えなかった。
そこから付き合いが始まって、気が付いたら10年立っていた。
うっかりしたら潰してしまいそうだった身体は立派になって、健康そのもので元気も愛嬌もあるんだから出会ったほとんどの人は夢中になった。
もちろん、わたしもいつの間にかそうなっていた。
「おやあ、元気なわんちゃんだねえ」
今日も散歩しながらそう声をかけられた。
それがいまのわたしには誇らしかった。
「はい、大切な家族なんです」
3/4/2024, 10:12:23 AM