#43 愛言葉
──信じてみてもいいのかな。
「『この心の揺らぎを愛と仮定したとして、わたしはあなたに愛を伝える言葉を持っていません。あいを受け取ることも、注ぐことも、みんなが当たり前にできるようなことが、どうにもわたしには一切できないようなのです。
これが生まれついてのものなのか、それとも成長する過程での……』ねえ、ちょっと、大丈夫?」
「何故お前は朗読の課題でそんなものを選ぶ……」
「いや、ちょっと愛について考えてみようかと」
「だからといって、おまえは、っ」
「待って、泣かないで!? え、ごめん」
「おまえはわるくない。さっさと覚悟をきめないあいつがわるい」
「あっちにも色々あるんでしょ」
「おまえのほうがいろいろある」
「まあねえ」
「そして、おまえもおまえだ」
「え?」
「そろそろ覚悟を決めてあいつの手を取れ」
「……まだ、」
「卒業までに決着が着かなければ、苦しむのは自分だろう」
「痛いところ突いてくるなあ」
「当然だ、何年お前の親友をやっていると思っている」
「えー、六年?」
「そんなにか、長いな」
「自分で言ったんじゃん」
「そうだが」
「ふふ、……どうすれば良いんだろうね」
「さてな。自分で考えろ」
「冷たい」
「お前なら自分で答えが出せるだろう」
「そう、だね。そろそろ信じてみても良いのかなあ」
(愛言葉)
10/29.加筆しました。親友な二人です。
10/26/2024, 12:22:48 PM