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白い天井、狭い部屋。誰の声も聞こえない静けさ。私が『あ』と大きな声で言ってみれば、狭い部屋中に響き渡る。この部屋にも随分慣れたものだ。

――いつになったらこの部屋を抜け出せる?

なんて考えるのは野暮なことだと知っている。でも、考えたくなる。未来を見据えるのと一緒だから。明日目を覚まさないかもしれない。目を瞑ったら私はこの世からいなくなっているかもしれない。不安になって、眠りたくない日々もあった。もうダメかもしれないと弱気になる日も。
それでも、私には生きる希望があった。

「名前ちゃん!」

狭い部屋に響き渡る声。毎度、五月蝿いと彼は怒られてしまうけれど響くぐらいの大きくて元気の良い声が私の調子を良くさせてくれる。
眠るのが怖い、と言った時も

「じゃあ、俺がずっと手を繋いでいてあげるから」

と彼はずっと手を繋いでいてくれた。目を覚ませば、彼の可愛い寝顔が見えて、それでも力が抜けることなくぎゅっと手は繋がれたまま。あたたかな温もりが伝わってきて安心を覚えた。

「大好きだよ」
「…私は」
「身体が弱いとかそういうのは関係ない。俺が大好きなの」
「あのね、」

『私も大好きだよ』と伝えたい。けれど、伝えてしまったら明日どうなるか分からない私は彼を縛り付けてしまう気がして止めた。

「大丈夫、明日も明後日も、1年後も何年後だってキミの傍には俺がいるよ、いさせてよ」

彼の優しさに何度も縋りたくなった。でも、私はその答えを有耶無耶にしてうまくかわす。
こんな私でも会いに来てくれる唯一無二の人。そんな彼に私は生かされているのかもしれない。

――私も大好きだよ。ずっと、一緒にいたいな

伝えられたらいいのに。

6/4/2022, 11:52:18 PM