灰燼

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地に伏しながら、喘ぐように息を吐く。体の至る所が激しい痛みを訴えてくる。戸惑いや怒り、燃えるような激しい痛みで次々に涙がこみあげてくる。

なんで、お前がここに。ふざけるな。普通こんなことしねぇだろ。いかれてる。いつ、どこでバレたんだ。これまでずっと気付かれなかったのに。お前は気付いた素振りすら見せなかったのに。

何が起きたかわからないって顔してる。ずっと前から気付いてたよ。あなたが私に興味がなかったことくらい。あなたのことなら何だって分かる。好きな食べ物、行きつけの本屋、家族構成、交友関係。あなたが何を考えているのかも。だからこれまでずっと騙された”振り”をしていた。それでも別によかった。

でも、ごめんね。我慢がきかなくなっちゃった。
子どものころから欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れてきた。私は、初めてあなたを見かけたときからずっとあなたが欲しかった。
でも苦しめたいわけじゃないの。すぐに楽にしてあげる。

滲む視界で、恍惚とした表情を浮かべたあいつが刃を振り下ろすのが、やけに遅く感じた。この苦しみから逃れられる瞬間を、只々待ち続けた。

7/12/2024, 3:01:21 PM