いぐあな

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300字小説

冬ごもり

 僕はこの山に住む狼だ。と、言ってもただの狼じゃない。遠い昔に山の魔物を倒した聖獣の子孫らしい。まあ、もう特別な力は無いし、身体がデカイだけだけど。
 山に雪が降り始めると僕は冬ごもりに向かう。大きな身体ではちょっと吹きさらしの寒さはキツイ。熊は穴蔵で冬眠するけど僕は……。

「おお、今年も来たか」
 山の麓の国境警備隊とかいう建物で、兵士さん達がほくほくと迎えてくれる。
 毛を梳いて洗ってくれて
「よしよし、警備隊の紋章の入った首輪だ」
 美味しくて暖かいご飯をくれて、暖炉の前に寝かせてくれる。
 僕をかまう兵士さん達の顔はどこか寂しそうで、きっと冬は寒さがこたえるのだろう。
 だから皆で一緒になって、暖かく過ごすんだ。

お題「冬は一緒に」

12/18/2023, 11:59:30 AM