すう、すう、と規則正しい寝息を立てて眠る彼女。眠りについていながらも、触れれば温かく滑らかなのは、生きている人間という証拠。
「……」
家族も、愛する人も随分前に亡くした。
それから、仕事も相まって精神は強くなった。だが、壊れているとも指摘された。そうかもしれない。
だけどまだ、彼女がいる限りは。
歳は離れているし、半ば拐ってきたようなものだけど、彼女を幸せにしたい。
「……おじさん」
可愛らしい寝言だ。嬉しいことに、想いは通じている。だけど今は、彼女の行く末が定まるまで見守ることにしている。
この気持ちを伝えるにはまだ早いのだから。
「おやすみ。いい夢を」
『葬儀屋が生きている理由』
「光と闇の狭間で」2023/12/02
12/2/2023, 2:59:23 PM