深夜の廃墟を君と一緒に回る。
「怖い」と言いながら抱き着いてくる君の頭を撫でながら、「大丈夫だよ」と余裕を見せつける。
俺は深夜の廃墟も平気だけど、君は怖がりだね。そんな君がかわいい。
昔は悪友達と廃墟に忍び込んで遊んでいたもんだ。深夜に肝試しもしたりしていた。楽しかったな。誰も来ないし、悪いことをするのにも丁度良かった。
だから、慣れていたし、今まで実際にそういう目に遭ったことがないからなのか、なんでこれで怖いのかわからない。
「怖いよ」
君が震えている。
怖がらせてしまって悪かったな。俺の趣味に付き合わせてしまった。
――そういえば、なんでここに来たんだっけ?
あぁ、そうだ。ドライブ中にたまたま廃墟を見つけたんだった。最近は大人になってしまったからか、廃墟に忍び込むなんてもう随分としていなかったし、懐かしくなってつい「一人でも」と立ち寄ってしまったんだった。
「絶対に離れないでね」
怯える君がかわいいことを言ってくる。
「怖がらせてごめんね」
安心させようと君を胸に抱き締める。手にぬるりとした何かが触れる。手に着いたそれは赤黒く、生臭かった。
そこで気付いてしまい、立ち止まる。
――ところで『君』って誰だっけ?
背筋に一筋の冷たい汗が流れた。
『怖がり』
3/17/2024, 7:31:45 AM