夜兎

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壊れて動かなくなった懐中時計。
祖父の大事な形見で手放せない代物だ。

金細工は所々が剥げ、地金が露わになっている。
蓋を開けて秒針を確認してみても、
十二時で止まっている。

それは、祖父が天国に旅立った時間。
意識もなく、声も聞こえなかった筈の祖父が、
最後に微笑んでくれた。

幼い頃から大好きだった優しい笑顔
それが、もう見れないなんて哀しかった。

涙が頬を伝い落ちていく。

さようなら。
ゆっくり眠ってね。


#時計の針が重なって

9/24/2025, 10:29:51 AM