優歌里

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『君は今』 

5年付き合った彼と別れた。
そして数年後、私は別の人と結婚した。

時々思い出す。
生まれて初めてした傘の下での告白。
彼と車の中で聴いたLove Song。
彼と一緒に食べたモスバーガー。
別れた日の朝の会話。
今もハッキリと覚えている。
「好きだから別れたくない」
初めて聞いた彼の本音だった。
もっと早く聞きたかった。

そんなことを思い出しながら車を走らせ気がつくと2人でよく行ったプラモ屋に着いていた。
あの頃とは違う店内。
いまだに変わらないのは好きな車だけだった。
懷かしくて大好きな車を手にとろうとしたのと
同時に隣りにいた男性も同じ車を手にとろうとしていた。
「あっ、すみません」
そう言って男性はさっと手を引っ込めた。
聞き覚えのある声と優しい口調。
私はドキドキしながら男性の顔を横目で確認した。
驚きのあまり声が出ない。
心臓が飛び出んばかりのドキドキ音。
懷かしくて思わず涙がこぼれた。
男性が話しかけてくる。
「僕は他のを買いますから良かったらどうぞ」
あの頃と何も変わらない彼の優しさ。
店内は変わっても変わらないものがあった。
嬉しさのあまり涙が止まらなくなった。
涙でぐちゃぐちゃになりながら私は言った。
「ありがとうぅ…ございます。」
そして彼の顔を見た。

彼が驚いた顔で私を見る。
「久しぶり…だね。元気そう…だね。」
私はコクリとうなづいた。
懐かしい声にまた涙がこぼれた。
「ずっと泣いてるけど何かあったの?良かったら聞くよ」
泣きながら答える私。
「昔のこと思い出してた」
それから2人で店を出て近くの喫茶店へ行った。
色んな話をした。
別れてから借金地獄になったこと。 
監禁生活だったこと。
今現在のこと。 
昔のことをよく思い出すことも全部話した。
彼は黙って私の話を聞いてくれた。
そして、ひと言
『君は今幸せですか?』

2/28/2024, 5:02:06 PM