高く高く
少しウエストが太くなった猫を連れて、食後の散歩に出た。
畑の前に行くと、なにやら騒がしい。 カエルの一団がやけに騒いでいる。
なんだって?
にゃあ。(どっちが高く跳べるかで勝負してる)
どっちって?
にゃあ。(みどりと茶色)
集団の輪の中で、二匹が睨み合っている。
にゃあ。(判定の仕方がわかんないみたいだ)
やれやれ。しょうがないな。
僕は物置から脚立を持ってきて、広げて置いた。
何段目の踏み板まで跳べるか。これならわかりやすいだろ。
にゃにゃ。 猫がカエル達に説明すると、2匹とも頷いて了承した。
先手 みどり。鋭い視線で脚立を見上げ、3回ほど喉を膨らませたあとジャンプした。太ももの筋肉がしなり、腱が美しく伸びた。タッタッと見事な着地。
記録 2段目。
後手 茶色。ふてぶてしくスタート地点に寄る。周囲は皆みどり色だが、そんなことは一切気にもしない。泰然自若。観客の歓声も待たずにサッと跳んだ。ダッと音を立てて着地。
記録 地面。
歓声が止んだ……。えっ?な、なに?今の?どういうこと?
しばらくして。沈黙を破ったのは茶色だった。
ケ、ケロケロ、ケロケロ、ケロケロケロケロ。
なんだって?
にゃあ。(さっきまで土の中で寝てた。寝起きだから本調子じゃない。ホントはもっと高く跳べる、だってさ)
観客がいっせいに騒ぎ出す。
ああ、うるさい、うるさい。じゃあ脚立、向こうに置いておくから、気が済むまでやってくれ。
僕は畑の端っこ、家からできるだけ離れたところへ脚立を運んだ。カエルの一行があとに続いた。
じゃあな。 脚立をセットして、僕は家へ向かった。
にゃあ。(おいらなら、脚立の天辺まで跳べるぞ)
嘘つけ。いつの話だよ。ちゃんと運動しろ。最近ちょっと太り過ぎだぞ。
にゃ。(お前もな)
10/14/2024, 10:30:16 PM