眠る君を見下ろす。
苦しげに眉間に寄せられた皺をそっと撫ぜてやれば、幾らか表情が穏やかになった。
あの時君を救えるのは私だけだった。
今にも暴かれる寸前だった君を、私が救い出した。
まだ明けない空から絶え間なく雪は降る。
君と二人、閉ざされた城の中にいる錯覚を覚える。
手帳に書き付けた数式を指でなぞれば、やがて訪れる奇跡の確信が伝わってくる。
君を抱えたときに感じたあまりにも美しい命の重みを、21g程度では表せない。
君という器に愛を注いでみたいと思った。
どこまでも受け入れてくれる君を私で満たせば、君はどんな顔で私を見るだろうか。
変化は怖くない。
無関心だけが唯一、恐れるべきものだ。
君が目を開くのを私は待っている。
瞼の震えすらも見逃さぬように。
君の脈拍に合わせて呼吸する。
夜はまだ明けない。
12/13/2023, 11:08:18 AM